お問い合わせ

「シフト手帳」開発者インタビュー

INDEX 目次

シフト管理の老舗アプリ「シフト手帳」の開発者・小林さんは、15年間大切に育てたアプリをGMOプロダクトプラットフォームに承継するという決断を下しました。

 

「譲渡の話はすべて断ってきた」という小林さんの決断を後押ししたのは、信頼と熱意でした。

プロダクト承継までの経緯と、これからについて伺いました。

 

「シフト手帳」はどのような経緯で開発したのですか。

アプリ開発を始めたのは2010年です。ちょうど世の中はiPhoneが普及し始めた頃で、友人に誘われてアプリをリリースしたところ、当時の給料ぐらいの収益になり、本腰を入れてアプリ開発で独立を目指しました。「シフト手帳」は、2011年にリリースした2番目のアプリです。自分のアルバイト経験なども踏まえ、アプリを設計しました。今ではシフト管理ができるアプリはいくつもありますが、当時としては画期的で、リリース後は順調にユーザー数が伸びていきました。

長期で使用するユーザーも多いアプリだと聞きました。

アプリの機能上、シフトやメモを手帳代わりにしている方も多いからだと思います。それゆえに、バグがあると「シフトが見られない」「メモ帳が使えない」「スケジュールが分からなくなった」とのお声を大量にいただくこともありました。時には、ひたすら謝罪メールを送ったこともあります。

 

ただ、それだけ日々ユーザーの皆様に活用していただいているということでもあり、15年間、ひとりで開発・運用を続ける中で苦労も多かった反面、ユーザーとの見えない絆を感じていました。

 

特に、「シフト手帳」の特長でもある給与計算は、ユーザーからの声をもとに、共に育ててきた思い入れのある機能です。実は、リリース時の「シフト手帳」には、アプリ名通りのシフト入力機能しかありませんでした。ですが、レビューを通じてユーザーの声を拾い上げ、残業代算出や時間帯機能の追加など、細かい要望に応えてきたことで、皆様に愛用していただいている現在の「シフト手帳」が完成したのだと思います。

 

「アプリの売却に興味はあるか」「譲渡の予定はないか」といった問い合わせはいくつも受けていましたが、そういった開発・運用の経緯もあり、これまでは返信もしていませんでした。

なぜ、そんなにも思い入れのあるアプリの承継に踏み切ったのでしょうか。

実は、GMOプロダクトプラットフォームも、元々はプロダクト譲渡を希望してくる会社のうちの1社でした。何回かご連絡をいただいてはいたのですが、その他の譲渡希望の連絡同様、スルーしていました。

 

お話を伺うことになったきっかけは、仕事で縁があった人から「『シフト手帳』を買いたい人がいる」と連絡があったからです。信頼している相手だったため、とりあえず概要だけは、と聞いてみると、GMOプロダクトプラットフォームからの連絡でした。正直、「そこまで本気か!」と思いました。

ですが、最初はやっぱり、断るつもりでしたね。この時点では、リリースから10年以上も支え続けてくれているユーザーへの責任として、自分が管理・運用しなければならないという思いの方が強くありました。

 

しかし、GMOプロダクトプラットフォームの担当者とやりとりをする中で、自分でも驚くことに、考えが変わっていきました。理由はいくつかありますが、GMOインターネットグループというブランドに信頼感があったことや、「シフト手帳」の開発・運用を他人に任せることで、新しいことにチャレンジする余裕ができると思ったこと、そして何より、担当者の方とお話ししてみて、信頼できると感じたことが大きかったように思います。

 

ただ、私自身、それまで一回も承継を経験したことがありませんでした。長年応援してくださっているユーザーへの思いやプロダクト承継への不安、契約内容など、懸念点は正直いくつもあったのですが、GMOプロダクトプラットフォームの担当者は、そのすべてに対して親身に相談に乗ってくださいました。

 

さらには、「シフト管理カテゴリで現在シェア1位の大手アプリを抜くつもりで、事業計画や今後のアプリの展開を考えています」と言っていただき、それなら託してみようかな、と思えました。

では、実際にプロダクト承継をしてみて、いかがでしたか?

当然、寂しさはありました。アップグレードに対してレビューで支持してくれるユーザーや、新機能の実装を喜んでくれたユーザーのことも頭に浮かびました。運営元が変わることに、ユーザーがどう反応するだろうかといった不安もありました。

 

ですが、実際には、現在の「シフト手帳」の開発チームは私と同じくらい、「シフト手帳」に愛着を持ち、良いアプリにしようと取り組んでくれています。アプリの譲渡においては、譲渡先の企業がアプリのアップデートを放棄するようなケースもあると聞いていましたが、その心配がなく、安心しています。

 

また、GMOプロダクトプラットフォームから説明いただいていた事業計画の中には、アプリを使用すると報酬としてポイントがもらえる機能を加える案があり、先日、この機能が実装されました。アプリの性質上、「ポイ活」と相性は良いと思うので、今後がますます楽しみです。このような案は個人開発ではなかなか思いつきませんし、やろうとしても実装が大変なので、GMOプロダクトプラットフォームの力があってこそだと思います。ユーザーのメリットが広がっているという点で、譲渡の効果が着々と現れているのを感じます。

プロダクトの承継後、現在はどんなことに注力していますか?

現在は、別のアプリの開発・運用に力を入れています。「シフト手帳」の承継によって得た資金を活用して広告による集客を強化したり、著名なYouTuberに動画での宣伝を依頼したりして、認知度向上に取り組んでいます。大きな資金を投じて広告を行うのは今回が初めてなので、手法や効果について、試行錯誤しながら多くを学んでいます。

 

「シフト手帳」をリリースした2011年当時と比べると、現在のアプリ開発の状況は大きく変化しました。今やアプリの数は膨大で、優れたプロダクトであることは前提条件にすぎません。かつてのように実装を重ねればランキングが上がっていく時代ではなく、適切なプロモーションを行わなければ認知されなくなっています。

 

そういった意味で、今回のプロダクト承継は、アプリ開発者として新たな一歩を踏み出すきっかけになったと感じています。「シフト手帳」は自身が手がけた中で最も大きなプロダクトだったため、自分の手を離れたインパクトはやはり大きいですが、新たなスタートだと捉えて取り組んでいます。

 

最後に、プロダクト承継を検討している個人開発者へメッセージをお願いします。

プロダクト承継に成功する上で重要なことは、自分が納得できるかどうかだと思います。

 

譲渡先の企業によっては、アプリの展開方針やビジネス面での考え方が異なり、期待通りに運用してもらえない可能性もあります。一度譲渡すると、アプリについて口を挟むことはできなくなるため、不安要素があるのであれば、承継前にすべてを解消しておく必要があると思います。

 

その点、GMOプロダクトプラットフォームは、信頼できる開発チームのメンバーが「シフト手帳」に真摯に向き合い、これまでのユーザーとも共に歩んでいこうとしてくれています。その姿勢が何よりありがたく、譲渡して良かったと感じています。